乾燥式回収装置

乾燥式回収装置の概要

乾燥式回収装置とは、主に粉体やスラリーといった湿った状態の材料から、溶媒や水分を効率よく蒸発・除去を行い、同時に蒸発した成分(主に有機溶媒)を回収するシステムとなっています。化学や食品、医薬、金属加工などさまざまな業界で使用されている技術です。この装置は、乾燥と回収を同時に行うことから、資源の再利用や環境負荷の低減への貢献が期待できます。

この乾燥式回収装置の基本的な仕組みは、下記の通りとなっています。

  • 加熱・乾燥部
    粉体やスラリーといった対象物を棚やコンベヤー状に配置した後、ヒータやバーナーなどの熱源装置を使用し、温度を上げていきます。その後、加熱された空気や窒素ガスを循環させることによって、材料中の溶媒や水分を蒸発させます。
  • 蒸発・搬送
    加熱されることによって蒸発した溶媒や水分は気体になりますが、装置内の気流により回収部に運ばれます。ここでは、循環ファンを用いて装置内の湿度・気流を一定に保ち、効率的な乾燥につなげています。
  • 回収部
    上記の工程で蒸発した溶媒成分は、冷却器やコンデンサにて冷やされて凝縮され、液体として回収されます。もし取り扱っている溶媒が可燃性や毒性があるものだったとしても、窒素ガスなどの密閉循環方式を用いることによって、安全な回収が可能になります。
  • 排気系
    残ったガスはフィルターやスクラバーにより処理が行われ、必要に応じて再循環が行われます。

このように、乾燥式循環装置は溶媒のリサイクルと廃棄物削減に役立つ重要な技術であり、環境負荷の低減や経済的なメリットも期待できます。

乾燥式回収の仕組みと原理

乾燥式回収装置の原理は、上記でご説明している通り、「加熱による蒸発」と「冷却による凝縮」に基づいた形になっています。まず材料を加熱して、その材料が含有する溶媒や水分を沸点付近またはそれ以下の温度で気化させます。さらに、蒸発した機体が搬送され、冷却器やコンデンサを使用して冷却することによって、再度液体になって回収されるという流れになりますが、この仕組みによって高効率で溶媒を回収可能です。

乾燥式回収では、加熱による蒸発を行うことが必要になってきますが、その際に使用される乾燥技術には、「熱風」「遠赤外線」「真空」などがあります。

湿式回収装置との違い

溶剤回収装置にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴を持っています。ここでは、湿式回収装置と乾燥式回収装置の2つについて比較し、違いについて見ていきましょう。

まずそれぞれの原理ですが、乾燥式回収装置は、材料を加熱することによって水分や溶媒を蒸発させ、再度冷却して回収を行います。対して、湿式回収装置は排ガスを洗浄液(水や薬液)と接触させることによって、気体中の有害成分を溶解・中和・反応させて除去を行うことを目的としています。以上の仕組みとなっていることから、乾燥式回収装置はVOCを除去・回収したい場合に使用され、湿式回収装置は水に溶けるガスを除去したい時に使用するといった使い分けができます。

そのほかの違いとしては、乾燥式回収装置は構造がシンプルであることから比較的メンテナンスが容易である反面、湿式回収装置の場合は液の補充やph管理などが必要となっており、ランニングコストがやや高めであるという面があります。

また、乾燥式の利点として腐食が少ない点や、水や液体を使用しないために排水処理が不要といった点が挙げられますが、その反面、粉じん管理が必要な点などが課題として挙げられます。

このように、乾燥式回収装置と湿式回収装置にはさまざまな違いがあります。これらは溶剤回収装置を選択する際のポイントともなる部分。装置を導入する目的などをはっきりとさせておくことが大切であるといえます。

乾燥式回収装置のメリット・デメリット

乾燥式回収装置は、構造がシンプルで、機械的な駆動部が少ないことからメンテナンスが比較的容易な点がメリットのひとつです。メンテナンスは、装置の安定稼働や処理性能の維持といった点に加えて、安全性の確保などにも関わってきます。そのため、メンテナンスをしやすい乾燥式回収装置の導入には大きなメリットがあるといえます。

また、水や液体を使用しないことから排水処理が不要である点も特徴のひとつです。そのため、排水処理コストや必要なスペースの削減につなげられます。そして、高い回収率と再利用性が大きなメリット。有機溶媒やVOCの回収率が高く再利用が可能となります。

このように、乾燥式回収装置にはさまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。材料に熱を加えて乾燥させるため、熱源が必要になる点や、粉塵爆発のリスクに注意しなければならないといった点などがデメリットとして挙げられます。

導入時のポイント

乾燥式回収装置を導入する場合のポイントは、処理対象の性質と状態に応じた、乾燥方式の選定を行うことが挙げられます。また、デメリットの部分で解説しているように、粉塵爆発のリスクに注意する必要があることから、安全性は十分確認しておくことが大切です。

そのほか、運用コストや集塵機などの補助装置などについても確認した上で導入の検討を行っていきます。メーカーの中には、テスト機を用意しているところもありますので、可能であれば導入前にテストを行っておくと、ニーズに合ったものかどうか確認できるためおすすめです。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18