溶剤の廃棄については環境規制や法律で定められています。そこで、溶剤を利用する企業にとって重要な設備となるのが、溶剤回収装置です。本記事では、溶剤回収装置に関連する法規制と、それに関連する補助金について解説します。
大気汚染防止法は、大気中への有害物質の排出を規制する法律であり、揮発性有機化合物(VOC)の排出削減がテーマとなっています。この法律は塗装業、印刷業、化学工業などを対象としており、各業種に応じた排出基準値が設けられました。
基準を超過した場合、罰金や操業停止命令といった罰則が科される可能性があります。
廃棄物処理法は、廃棄物の適正な処理を定めた法律です。事業者は、廃溶剤を適切に分類し、許可を受けた業者に委託して処理することが義務付けられています。
違反時には罰金や業務停止命令など厳しいペナルティが科される場合があります。この法律はリサイクル推進をも目的としており、溶剤回収装置の導入により廃棄物を減らし、資源を有効活用することが可能です。
PRTR法は、特定の化学物質の環境中への排出量や移動量を事業者自らが把握し、報告することを義務付ける法律です。溶剤に含まれる化学物質も対象となる場合があり、適切な管理と報告が求められます。
溶剤回収装置の導入によって、化学物質の排出量を削減し、報告義務の軽減や環境負荷の低減につなげることが可能です。
環境規制に対応するために、溶剤回収装置の導入やリプレイスを検討しているものの、「どの装置を選べば良いのかわからない」「今よりも回収率を上げるには?」などの疑問を持つ方も多いですよね。当サイトでは、反応・抽出、脱脂洗浄、乾燥など、さまざまな製造工程に適した溶剤回収装置を、用途別にご紹介していますので、ぜひご参考にしてください。
溶剤回収装置の導入には初期投資が必要ですが、各種補助金制度を活用することで負担を軽減することが可能です。主な補助金制度を紹介します。
環境省や経済産業省では、VOC排出削減や省エネルギー対策を目的とする補助金制度を設けています。二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金があり、溶剤回収装置の導入が補助対象となる場合があるので活用したいところです。
国からの補助金を受けるためには、排出削減の目標値を達成することや環境負荷軽減の実績を示さなくてはなりません。補助金の上限額や申請期間は制度ごとに異なるため、詳細な確認が必要です。
各都道府県や市町村でも、地域の産業特性や環境目標に応じた補助金制度を設けています。東京都は中小企業向け環境対策助成金、大阪府は省エネ機器導入補助金などです。
これらの制度は地域ごとに要件や補助額が異なるため、事前に各自治体の公式ウェブサイトや窓口で情報を確認してください。
補助金申請には以下のプロセスがあります。
申請の際、以下の点に注意してください。
補助金を活用できれば、初期投資の負担を軽減し、事業をスムーズに進めることが可能です。
輸送用機械器具製造業のA社では、洗浄工程で使用するトリクロロエチレンの揮発ガスが県条例の排出基準値を超過していました。
この問題を解決するため、モリカワの有機溶剤ガス回収装置「REARTH®Sシリーズ」を導入。導入前は、大気排出濃度が725ppm、使用量が月間2.5トン(大気排出量1.8トン/月)に達していましたが、装置導入後は大気排出濃度が15ppm、使用量も0.85トン/月となり、66%の削減に成功しました。
県条例の排出基準値をクリアし、環境負荷の低減とコスト削減を同時に達成しています。
※参照元:株式会社モリカワ公式HP
(https://www.morikawa-ltd.co.jp/division_development/environment/precedent/)
大阪府内のサービスステーション(SS)は、環境規制に対応するため、地方自治体の補助金を活用してべーパー回収装置を導入しました。
この補助金を利用することで初期投資の負担を減らし、販売量の多いSSに優先的に導入することで、効率的な費用対効果を実現しています。
また、大気環境配慮型SS認証取得により、社会的評価を向上させるとともに、新卒採用などの企業価値向上にもつながる成果を上げました。
※参照元 PDF:VOC排出抑制における企業の取組事例-大阪府
(https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/965/2022seminar_4_sankankyou.pdf)
溶剤回収装置の導入を検討する企業にとって、今後の法規制や補助金制度の動向を見据えておきましょう。
VOC削減や廃棄物処理基準は、今後さらに厳しくなる可能性があります。日本国内では、大気汚染防止法や廃棄物処理法が段階的に改正されることが予想され、より高い基準が求められるでしょう。
また、国際的な規制動向にも注目です。EUのREACH規制やアメリカのEPA規制は、環境負荷の高い化学物質に対して厳しい基準を設定しており、これらの基準が日本の規制にも影響を与える可能性があります。
カーボンニュートラルに向けた取り組みが進む中で、国や地方自治体の補助金制度に期待したいところです。環境対応設備の導入や、省エネ効果の高い機器への補助金はさらに拡充される可能性があります。
企業がこれらの制度を活用するためには、早期に環境対応設備導入計画を策定し、補助金情報を常にチェックしておきましょう。専門のコンサルタントに相談することで、申請プロセスを効率化できる場合もあります。
溶剤回収装置の導入は、法規制への対応だけでなく、環境保全やコスト削減、企業価値向上にもつながります。法規制の内容を正確に把握し、適切な補助金制度を活用することで、初期投資の負担を軽減しつつ、効率的な設備導入が可能です。
現状の排出状況や廃棄物処理の方法を見直し、導入計画を具体化する取り組みから始めてみてください。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など
95%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)