膜分離式溶剤回収装置

膜分離式溶剤回収装置は、電子材料や製薬、塗料業界などで活用されることが多い装置です。ここでは、膜分離式溶剤回収装置の特徴や種類、導入時のポイントについて紹介しています。

膜分離式溶剤回収装置とは

近年、地球環境の問題が大きく取り上げられ、使用済みの溶剤も自社で処理をする必要が出てきます。このような状況の中、開発されたのが「膜分離式溶剤脱水装置」です。

一般的な用途は、電子材料や製薬、塗料業界などに用いられています。膜分離式溶剤回収装置は、主に溶剤を回収するために使用しますが、より低エネルギーで行えるのがメリットです。

用途は、以下をご覧ください。

  • 洗剤溶剤の回収:電子部品工業・精密機械工業等洗浄溶剤の回収
  • 溶剤回収及び精製:化学工業、医薬品工業、食品工業、発酵工業等の溶剤回収および精製

膜分離式溶剤回収装置の主な種類

以下、各装置タイプごとに詳しくご紹介します。

1. ポリイミド膜を使用した脱水装置

芳香族ポリイミド膜は、アルコールなどの有機化合物の蒸気は透過しにくいですが、水蒸気は透過しやすいといった性質を持ちます。ポリイミド膜を使用した脱水装置は、その性質を利用しながら脱水を行う装置のことです。

主な適用溶剤は、以下の通りです。

  • アセトン
  • エタノール
  • メチルエチルケトン
  • ブタノール
  • イソプロピルアルコール
  • 酢酸エチル
  • メチル・イソブチルケトン
  • その他(ヘキサン・トルエンなど)

「膜分離式溶剤脱水装置」は、宇部興産株式会社で開発された脱水性に優れたポリイミド膜と、日本化学機械製造株式会社の蒸留・濃縮の技術を組み合わせた装置となっています。

上記2つの技術を組み合わせることによって、溶剤の回収をより簡単に行えるようになります。

参照元:日本化学機械製造株式会社公式HP PDFhttps://www.nikkaki.co.jp/products/detail/75

2. ゼオライト膜を用いた回収装置

Kanadevia 膜分離システム(HDS®)とは、化学産業の環境調和を担うゼオライト膜分離システムのことを指します。膜分離システムは、近年注目されている、省エネルギー分離・精製技術のことです。

HDS®は、独自開発のゼオライト膜エレメントを搭載している膜分離システムです。液体や気体といったさまざまな混合流体から、目的成分を分離・精製して、エネルギーの浪費を抑えているのが特徴です。

独自技術を駆使した結果、機能性材料であるゼオライトの薄膜化に成功したとされています。ゼオライトの持つ機能を用いて、液体や気体といった混合流体(から不純物を取り除き、目的成分を精製します。

ゼオライト膜の外部と内部に圧力差を設けると、特定成分を選択的かつ連続操作で分離・精製できます。透過させたい成分は、ゼオライトの種類や化学組成、もしくは操作条件によってコントロール可能です。

ゼオライト膜を用いた回収装置は、以下の作用を活用しているのが特徴です。

  • 分子ふるい作用:細孔より大きな分子は、進入不可能
  • 選択吸着作用:細孔空間と親和性の高い分子を吸着
参照元:カナデビア株式会社公式HP PDFhttps://www.kanadevia.com/business/field/electrolytic-hydrogen/hds.html

3. 蒸気透過法を使った回収装置

蒸気透過法を使った装置は、膜による気体分離の仕組みを活用しています。実際に回収される溶剤は、アセトンやエタノール、メチルエチルケトン、ブタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられます。

ポリイミド膜は、耐熱性、耐溶剤性に優れていて、蒸気透過方式のため、膜の汚れが少なく寿命が長い傾向にあります。

装置選定時のポイント

回収装置を選定する場合、処理対象の溶剤をはじめ、膜素材や流量、回収率なども確認しておく必要があります。ここでは、装置選定時のポイントについて解説します。

運用コストや廃棄物処理費用の削減について考慮

導入の際には、初期費用だけでなく、運用コストや廃棄物処理費用の削減効果についても考慮しなければなりません。高性能な装置の場合、初期費用が高くなるケースもありますが、長期的な運用コストや廃棄物処理費用の削減効果が期待できます。

そのような長期的な視野で考え、試算するようにしましょう。また、信頼性の高いメーカーにすると、サポートやメンテナンスなどにかかる費用など、長期的な運用コストの削減も期待できます。

メンテナンス性や安全性

溶剤回収装置は、適切な運用を行わないと、火災や爆発といった大きな事故を引き起こす危険性があります。そのような事故を防ぎ、安全に運用するためには、運転条件・管理体制などについても考慮しておく必要があります。

それだけではなく、装置の防爆仕様をはじめ、自動停止機能やメンテナンスの手軽さについても確認しておきましょう。

まとめ

膜分離式溶剤回収装置は、電子材料や製薬、塗料業界などに用いられています。より低エネルギーで行えるだけではなく、装置によっては設置スペースの削減にもつながります。回収装置を導入する場合、コストだけではなく、メンテナンス性や安全性などについても考慮しておくことが重要です。

当サイトでは、溶剤回収装置の基礎知識や取り扱っているメーカーについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18