冷却凝縮式溶剤回収装置は、地球環境を考慮し、大気中や工場に排出している有機溶剤ガスを回収・再利用する装置。環境対策になるほか、大幅なコストダウンにもつながるのがメリットです。ここでは、冷却凝縮式溶剤回収装置の特徴や種類、導入時のポイントについて紹介しています。
冷却凝縮式溶剤回収装置とは、溶媒ガスを外部に漏らすことなく、簡単・安全・スピーディーに、有機溶剤の濃縮と回収を行える装置のことです。製品によっては、精製・再生まで行えるほか、温度・エア吹付量の微調整までできるため、濃縮速度をさまざま制御することも可能です。
ここでは、冷却凝縮式溶剤回収装置の主な種類や特徴についてご紹介します。
加圧深冷凝縮方式は、排気ガスを加圧・急冷し、高濃度溶剤を回収する装置です。高除去率(99%以上)の特性を持っていることも特徴です。
日新化成では、「REARTH® Sシリーズ」を展開。REARTH(R) Sシリーズは「圧縮深冷凝縮方式」を採用している装置。除去率が99%以上を誇る有機溶剤(VOC)ガス回収装置として知られています。高品質な回収液は、精密部分洗浄・コーティング工程・ハードディスク装置製造関連といった分野で再利用されています。
REARTH® Sシリーズは、広範囲な溶剤と用途に対応している装置。各種有機溶剤(VOC)ガスの液化回収が可能となっており、溶剤変更にも、柔軟に対応できます。高い溶剤除去率により、溶剤使用料を大幅に削減するなど、経済効果にすぐれている点もポイントです。
設置も手軽で場所をとらないコンパクトな設計となっており、排水設備は不要となっています。
低温冷却凝縮方式は、ステンレス製コンデンサーと低温冷凍機にて冷却できる装置。コンパクトであり、省エネで冷却水が不要な点も特徴です。
テクノシグマの製品「エコクレール OSR-B300」は、 低温冷却凝縮方式を採用している装置。
同社のステンレスコンデンサーと低温冷凍機を組み合わせることにより、夏期でも冷却能力が低下せず-30℃以下まで冷却し、減圧下で効率よく有機溶媒を回収できる小型の溶剤回収装置となっています。エコクレールは、冷却水循環装置が不要なほか、大幅な省スペース化も可能です。
エバポレーター(蛇管型・簡易型・ジュワー型)や乾燥機とホースで接続して使用できるなど、さまざまな用途で活用できます。
高効率冷却+脱臭一体型装置は、冷却による溶剤回収とVOC対策を同時に行える装置です。
西部技研で採用している溶剤回収方法は、排気を冷却凝縮した後、液体として回収する方式を採用しています。凝縮された回収液は安定性が高いことから、リサイクルのための精製負荷を軽減できる点がポイントです。
また、熱交換器でコータ排気の熱を回収し、コータの消費エネルギーを削減します。冷却回収後の排ガスの残存溶剤を、VOC濃縮装置で回収して、低濃度で大気放出が可能となっています。
装置を選定する際には、排気ガスの性質(温度・濃度・量)や溶剤種類の確認はもちろん、コストや省エネ性能、回収率、設置面積なども考慮し、比較して検討するのがおすすめです。ここでは、装置選定時のポイントをご紹介します。
操作が簡単であり、自動運転や自動停止機能が備わっている装置は、作業負担の軽減や安全性の向上につながります。そのため、装置の操作は容易に行えるか、自動化された機能がどのくらい備わっているかあらかじめチェックしておきましょう。
溶剤回収装置は、適切に運用しないと、故障の原因になるほか、重大な事故を引き起こす危険性があるため、注意が必要です。安全に運用するためには、自動停止機能が備わっている装置を選んだりメンテナンスの容易さ、設置面積などにも注目したりする必要があります。
溶剤回収装置を選定する場合、コストについても考慮する必要があります。初期投資費用はもちろん、運用コストや廃棄物処理費用の削減効果についても考えておきましょう。
高性能な装置は、初期費用が高額な傾向がありますが、長期的な運用コストや廃棄物処理費用の削減効果も期待できます。装置を導入する前に、溶剤の種類や回収率、省エネ性能などトータルで考慮し、自社の予算に合う装置を選定するようにしましょう。
冷却凝縮式溶剤回収装置は、地球環境を考慮し、大気中や工場に排出している有機溶剤ガスを回収・再利用できる装置。各装置方式の特徴や適用例は、以下をご覧ください。
方式 | 加圧深冷凝縮方式 | 低温冷却凝縮方式 | 高効率冷却+脱臭一体型装置 |
---|---|---|---|
特徴 | 高い溶剤除去率・溶剤使用料を大幅に削減 | コンパクト設計・省エネで冷却水が不要 | 凝縮された回収液は安定性が高いことから、リサイクルのための精製負荷を軽減 |
適用例 | 製造関連などの分野で再利用 | 医療用機器、理化学機器の分野で活用 | リチウムイオン電池や電極形成工程で活用 |
導入すると、環境対策になるほか、大幅なコストダウンにもつながります。装置選定時のポイントを考慮し、現場のニーズに応じた方式の装置を取り入ることが重要です。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など
95%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)