石油化学産業では、溶剤が多用途に使用される一方、環境負荷の増加が課題となっています。そのため、製造過程で使用されるさまざまな溶剤を効率的に回収し、再利用するための重要なプロセスです。
本記事では、主な溶剤の用途、回収のポイント、具体的な事例について解説します。
石油化学産業では、以下のような溶剤が主に使用されています。
ベンジンは、軽質な石油製品で、主に溶剤や洗浄剤として使用されます。石油化学製品や塗料、印刷インキの製造において頻繁に利用されます。回収のポイントとしては、揮発性が高いため、蒸留による分別回収が有効。
ベンジンの揮発性を活用し、適切な温度管理と圧力を設定することで、効率的な回収が可能です。
ゴム揮発油は、ゴム製品の製造過程で使用される溶剤で、ゴムの溶解や加工をサポートします。これも揮発性が高いため、回収には蒸留や吸着などの技術が利用されます。
回収プロセスでは、ゴム揮発油が他の成分と混ざることが多いため、精密な分離とろ過が求められます。ゴムの残留物が溶剤に混入しやすいため、フィルターや吸着剤を使用して純度を高めることが重要です。
ミネラルスピリットは、主に塗料やインクの溶解剤として使用される石油製品で、揮発性の高い液体です。
回収には、溶剤の揮発性を利用した蒸留技術が主に使用されます。塗料の製造過程での使用後は未使用の溶剤を回収することで、コスト削減と環境負荷の低減が可能。再利用する際には、塗料の成分と混ざり合わないように注意深い分離処理が必要です。
ドライクリーニングに使用される溶剤は、衣類や布地から汚れを効率的に取り除くために使用されます。これらの溶剤は一般的に有機溶剤であり、揮発性が高いものが多いため、回収には蒸留式が効果的です。
ドライクリーニング後に残る溶剤を回収して再利用することで、溶剤の浪費を減らして環境負荷を軽減。溶剤の純度維持が求められるため、精密な回収と処理がポイントです。
機械洗浄用溶剤は、製造業などで機械部品の清掃に使用される溶剤です。油分や脂分が含まれており、回収プロセスでは、汚染物質を除去しつつ溶剤を回収する必要があります。
回収方法としては、油分を分離するフィルタリングと、蒸留を組み合わせた方法が有効です。汚れを完全に除去し、再利用できる品質にするため、適切なろ過と加熱が求められます。
インクの流動性や乾燥速度を調整するために使用される、印刷インキ用溶剤。インキに含まれる色素や顔料が溶剤に溶け込むため、回収時には成分を分離する工程が用いられるケースが多いです。主に真空蒸留方式・遠心分離方式・吸着方式など、用途に応じたさまざまな溶剤回収装置が活用されています。
殺虫剤用溶剤は、農薬や化学製品の製造過程において、化学物質を効果的に溶解するために使用される溶剤です。毒性が含まれる場合が多いため、回収時には注意深く扱う必要があります。蒸留装置を用いて、溶剤を高効率に回収することが一般的です。
石油化学における溶剤は、それぞれの用途に応じた回収方法を採用することが重要です。効率的な回収を実現することで、コストの削減と環境への負荷軽減が期待できます。
溶剤の回収や再利用は、廃棄物処理費用の削減や資源の有効活用につながります。溶剤回収装置で回収した溶剤は多目的な用途で利用でき、社内での再利用や他社への売却も可能。導入時の初期費用がかかる場合でも、長期的な目線で経済的なメリットが大きいと言えるのです。
これらのポイントを踏まえ、製薬業界における溶剤回収システムの導入、運用を検討してみてください。
溶剤回収装置を活用することで、溶剤の回収と再利用が可能になります。石油化学産業では、多様な化学物質が取り扱われるため、塩素系溶剤、フロン系溶剤、炭化水素系溶剤など幅広い溶剤に対応できる溶剤回収装置がおすすめです。
また、高温・高圧環境下での運用が一般的なため、耐久性と安全性が確保された設計が必要です。社内の運用環境や溶剤の化学的性質を考慮し、自社に合った装置を選びましょう。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめです。当サイトでは、反応・抽出、脱脂洗浄、乾燥など、さまざまな製造工程に適した溶剤回収装置を、用途別にご紹介しています。装置の導入をご検討の方はぜひご参考にしてください。
出光興産株式会社千葉工場では、樹脂製造工程で使用されるジクロロメタンの大気排出削減を目的として、2002年に自社開発のVOC回収装置「IDESORB」を導入しました。その結果、VOC排出量は2000年度比で約80%削減されました。
「IDESORB」は、圧力スイング吸着(PSA)法を採用しており、コンパクトな設計と低い運転コストが特徴です。また、脱着再生時に蒸気を使用しないため、溶剤を含む排水が発生せず、環境負荷の低減も実現しています。
参照元 PDF:千葉県公式ホームページ
(https://www.pref.chiba.lg.jp/taiki/documents/idemitsukou3_chiba.pdf)
溶剤は石油化学産業において多岐にわたる用途で使用されており、その効率的な回収や管理は生産性向上やコスト削減を実現するうえで欠かせません。そのため、溶剤の種類に応じた最適な回収技術の導入や、安全性を重視した設備の整備、さらに法令遵守を徹底することが重要です。
溶剤回収は外部委託するか、社内で回収装置を設置するかの選択肢があります。溶剤の購入量や廃棄物処理費用の削減など、長期的なメリットを目的とする場合は、自社内への導入を検討してください。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など
95%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)