触媒分解回収装置は、VOC(揮発性有機化合物)などの有害ガスを触媒の力で低温分解し、無害な二酸化炭素と水に変えて大気に放出する装置です。
この回収装置で使用されている触媒分解は、VOCやその他の有害物質を効率的に分解できる技術で、環境保護の分野でも高く評価されています。さらに、触媒は高温での燃焼を伴わず、二酸化炭素の発生を抑えることも可能である点も特徴です。触媒分解回収装置はこのようなプロセスを通じ、持続可能な環境管理を実現するための重要な技術とされています。
触媒分解とは、触媒を使用して分解を行う化学反応を指します。
例えば、車のマフラーにある三元触媒(白金・パラジウムなど)を用いて有害な排気ガス(NOₓやCOなど)を分解し、無害な物質(N₂やCO₂)に変えるのも、触媒分解のひとつです。また、酸化触媒による分解が行われる場合には、特定の触媒を用いて物質を酸化反抗させ、最終的に二酸化炭素や水などのより安定な物質に分解するという流れになります。
このように、触媒は反応物と結合することによって反応中間体を生成します。この反応中間体とは、反応物が最終性生物になるまでに一時的に生成される物質です。エネルギーの低い状態で進行することから活性化エネルギーが低下し、化学反応の反応速度が高まります。
また、触媒は反応前後で変化しないという特性を持っているため、触媒は何度も使用が可能です。ちなみに、VOCを分解する触媒としては、白金等の貴金属系触媒が広く使用されています。
触媒分解装置は、主に下記のようなプロセスで機能しています。
吸着回収方式は、VOCを含む排ガスから溶剤を効率的に回収・再利用するための技術です。主に活性炭や特殊な吸収材を用いることによって、排ガス中の有害物質を除去します。
このように、吸着回収方式も触媒分解方式もVOCを処理できる技術ですが、大きな違いとして「再利用性」という点が挙げられます。吸着回収方式はVOCを再利用・再資源化可能であるのに対して、触媒分解方式は完全に分解することから、再利用ができません。そのため、VOCに回収価値がある場合には吸着回収方式の方が向いている、といえます。逆に、VOCを完全に除去したい場合には、触媒分解方式が向いています。
またランニングコストに関しては、触媒分解方式の場合は触媒の劣化対策などを行う必要があることから、吸着回収方式の方がコスト面で有利であるといえます。そして、設置スペースの観点から見ると、スペースにある程度余裕がある場合には吸着回収方式が向いており、スペースに限られている場合は触媒分解方式が向いているといえます(触媒分解方式の場合、装置をコンパクトに設置することが可能です)。
燃焼分解方式・触媒分解方式いずれもVOCなどの有害ガスの処理で広く活用されている技術です。しかし、その原理や環境への負荷、安全性などにおいて大きく異なってきます。
さまざまな違いがありますが、温度とエネルギー効率の観点から見ると、燃焼分解方式の場合は約700〜1,000℃での運転を行うことから化石燃料を多く使い、どうしてもCO2の排出量が多くなる面があります。対して触媒分解の場合は、触媒の働きによって低温でも酸化が進むことから、CO2の排出を抑えられます。
安全性の観点から見ると、燃焼分解方式は高温を扱うことから、火災や爆発、熱損傷などに注意する必要がありますが、触媒分解方式は構造的にも安全であり、小規模でも対応が可能であるといった面もあります。
さらに、対象濃度に関しては、燃焼分解方式は高濃度のVOCを完全燃焼するのに適しており、触媒分解は中〜低濃度のVOCを効率よく酸化することが可能。高濃度の場合は触媒中毒などのリスクがあります。
このようにさまざまな違いがあることから、目的やコスト、設置の条件などをよく検討することが重要です。
触媒分解方式は、白金など特定の触媒によって化学反応を促進して、対象となる物質を分解する方法です。
この方法を用いた場合、低温反応が可能であることから、熱分解よりも省エネルギーであり安全性が高い点がメリットのひとつ。さらに安定性が高く、プロセス制御が容易であるという面も持っています。また、VOCなどを無害な形で処理できるために環境負荷が小さい点も特徴といえますし、目的の物質を選択的に酸化・分解することが可能であり、副生成物が少なく二次公害が起きにくい点もメリットです。
触媒分解方式のデメリットとして挙げられているのは、触媒のコストが高い点です。特に白金やパラジウムといった「貴金属触媒」と呼ばれる種類は高価であり、初期費用が高くなる可能性が考えられます。さらに触媒は、長時間の運転の中で徐々に活性が低下していきます。この点から定期的な触媒交換が必要であり、交換する場合のコストが課題といえます。また、硫黄やリンなどの不純物により触媒が失活してしまうため、定期的に洗浄や再生を行うことが必要となります。
触媒分解回収装置を導入する際のポイントは、対象ガスの濃度や種類に合った触媒を選定することです。また、導入しようとしている装置の処理能力やメンテナンス性の確認も必要です。特にメンテナンスについては、安定稼働や処理性能の維持、安全性の確保といった部分に直結してくる部分であるため、十分に確認することが求められます。
また補助熱源の有無や、設置しようとしているスペースに合っているか点もチェックしておくべきポイントであるといえます。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など
95%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)