溶剤回収装置の選び方と導入ポイント

溶剤回収装置の導入を検討する際には、適切な選定と導入ポイントを理解することが重要です。以下に、選定時の主なポイントと導入の際の留意点をまとめました。

溶剤回収装置の選ぶ際に重要なポイント

適切な溶剤回収装置を選定するためには、以下の点を考慮することが重要です。

使用する溶剤の種類と特性

装置の処理能力が自社の廃溶剤発生量に適合していない場合、過剰な負荷による装置の劣化や故障の原因となります。また、VOC規制基準を満たせず、罰則の対象となる可能性があるので、要注意です。逆に、処理能力が過大であると、エネルギーや運用コストの無駄が生じてしまいます。

そのため、導入を検討している回収装置が1日あたりどれだけの廃溶剤を処理できるかを確認しましょう。メーカーの公式サイトやカタログに処理能力(kg/日やL/日)が記載されているほか、メーカーの技術担当者に相談すると、自社に合った処理能力の機種を紹介してくれます。

溶剤の再生率と品質

廃溶剤をどの程度の割合で純度の高い再生溶剤として回収できるかもポイントです。調査の結果、吸着法と冷却法を組み合わせた特許VPSA方式の溶剤回収装置では、平均95~99.9%(※)の高い回収率が報告されています。メーカー公式サイトの製品紹介や導入事例に回収率が記載しているので、参考にしてください。

また、回収率だけではなく、再生した溶剤の純度や色、臭気なども確認し、再利用が可能かを判断することが重要です。装置の選定や設定が不適切な場合、溶剤が完全に回収されなかったり、回収された溶剤の品質が低下したりすることがあります。

※参照元:システムエンジサービス株式会社公式HP(https://www.system-eng.co.jp/method/recoverly-rate/

このサイトでは、回収率95%以上の溶剤回収装置を用途別に紹介しています。規制対応や環境負荷の軽減、長期的なコスト削減を実現する、回収率が高い溶剤回収装置をお探しの方は、ぜひ参考にしてみてください。

操作性と自動化の検討

操作が簡単で、自動運転や自動停止機能が備わっている装置は、作業負担の軽減や安全性の向上に寄与します。そのため、装置の操作が容易であるか、自動化された機能がどの程度備わっているかを確認しましょう。

溶剤回収装置の自動化機能は、運転開始から運転、停止までが可能な自動運転機能、異常や故障の自己診断機能、蒸留工程で適切な温度を保つための自動温度制御機能などがあります。自動化機能は多くの装置に搭載されていますが、設計や用途によってどの機能が搭載されているのかが異なります。

装置の選ぶ際には、装置に搭載されている自動化機能と、自社のニーズや運用条件がマッチするかチェックしてみてください。

ランニングコスト

溶剤回収装置の選定において、コストは重要な要素です。初期投資費用だけでなく、運用コストや廃棄物処理費用の削減効果も考慮する必要があります。

高性能な装置は初期投資が高い傾向がありますが、長期的な運用コスト削減や廃棄物処理費用の削減効果が期待できるため、長期的な視点で試算することが大切です。装置導入前に、廃溶剤の発生量や溶剤単価、廃棄物処理費用を基にコスト削減効果を試算し、投資対効果を明確にし、自社の予算に合う装置を選定してください。

また、信頼性の高いメーカーを選ぶことで、メーカーのサポート体制やメンテナンス費用など、長期的な運用コストの削減が期待できます。溶剤回収装置の選定においては、初期投資とランニングコストのバランスを考慮し、長期的なコスト削減効果を見据えた選択がおすすめです。

十分な安全性

溶剤回収装置は、適切に運用されないと火災や爆発などの重大な事故を引き起こす可能性があります。安全性を高めるには運転条件や管理体制、メンテナンスも重要な要素ですが、装置の防爆仕様や自動停止機能、メンテナンスの容易さにも注目しましょう。

また、安全データシート(SDS)が提供されない装置は、使用する溶剤の安全性や取り扱い方法が不明確で、事故のリスクを高めます。安全データシートとは、化学物質や製品の安全な取り扱いや保管、使用方法を示す文章です。安全に装置を運用するために、安全データシートが提供されている装置を選ぶようにしてください。

溶剤回収装置の導入ステップ

導入にかかる期間は、装置の規模や仕様によりますが、一般的には4〜5ヶ月ほどかかります。どのようなステップで導入するのか、ステップとポイントを見ていきましょう。

現状分析と導入目的の明確化

まず、自社で取り扱っている廃溶剤の種類、発生量、使用状況を改めて把握しましょう。現状の把握は、回収装置の適切な選定に役立ち、導入後の効果を高めます。

また、溶剤回収装置を導入する目的を明確にしておくことも大切です。環境規制への対応、コスト削減、企業のブランド価値向上など、目的と目標を設定してください。溶剤の購入量や廃棄量の削減目標を数値化することで、導入効果を測定しやすくなります。

ベンダー(メーカー)選定

導入する際には、複数のベンダーやメーカーから見積もりや提案を受け、性能、コスト、納期、アフターサービスなどの観点で比較検討します。特に以下の点に注目してみてください。

  • 技術力と実績:過去の導入事例や技術的な信頼性を確認します。
  • 装置の適合性:自社の廃溶剤に最適な処理能力や機能を持つかを評価します。
  • アフターサービス:定期的なメンテナンスや緊急対応の体制を確認します。

企業によっては、現場訪問によるヒアリングやテスト機での性能検証を行い、適切な装置を提案してくれる場合もあります。信頼できるベンダーを選ぶことで、導入後のサポートや保守がスムーズに進みます。

サンプルテストの実施

サンプルテストは、導入後の運用がスムーズに進むように、事前に問題を特定し、最適な装置を選定するためのステップです。

内容は、メーカーが溶剤サンプルの収集と分析から回収装置の選定、テスト運転、パフォーマンス評価など。これにより、回収装置の適合性や適切な溶剤回収装置、回収後の溶剤が再利用な状態か、などがわかります。

複数のテストを経て、最終的にその装置を本運用に導入するかどうかを判断。もし改善点がある場合には、装置メーカーと協力して対応策を決定します。

装置の製作と設置

選定された装置の製作を行い、納入します。製作期間や納期はメーカーによって異なるため、事前に確認しておきましょう。製作が完了したら、装置の設置工事を行い、試運転を実施。装置が設計通りに機能するか、問題がないかを確認します。

操作教育と引き渡し

操作方法やメンテナンス手順について、担当者への教育を実施。その後、正式な引き渡しを行い、運用が開始されます。

溶剤回収装置の選び方と導入ポイントまとめ

溶剤回収装置の導入は、使用する溶剤の特性や処理能力、回収率、操作性、安全性などを考慮して選定することがポイントです。自社に合う装置選びと導入ステップを踏むことで、環境負荷削減やコスト削減が実現します。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18