VOC(揮発性有機化合物)の排出削減は、法規制・ESG・省エネの観点から世界的に優先度が高まっています。装置分野では、RTO(再生熱酸化装置)や触媒酸化、活性炭吸着、ゼオライト濃縮といった成熟技術に加え、低炭素・省電力を意識した高効率化、デジタル監視、溶剤回収の高度化が同時並行で進んでいます。本稿では、市場規模と成長率、需要を押し上げる要因、技術トレンド、エンドユーザー別・地域別の動向を俯瞰し、今後の注目ポイントを整理します。
公開市場資料では推計に幅があり、将来予測の見立てが分かれます。ある調査では、世界のVOC回収・除害市場は2024年に約176.1億米ドル、2033年に169.43億米ドルとし、期間中のCAGRを28.6%と記載しています(表記と整合性に留意が必要)。
※参照元:Business Research Insights
(https://www.businessresearchinsights.com/jp/market-reports/voc-recovery-and-abatement-market-102320)
一方、別ソースでは、VOC処理・除去システム市場の2025〜2032年CAGRを約7%とする保守的な見通しも提示されています。予測レンジが広いのは、対象に「回収」を含めるか、「処理(除害)」中心か、適用産業の範囲差、為替前提の違いなどが背景にあります。実務では、複数ソースの中央値やレンジで把握しておくのが安全です。
※参照元:Pando(https://pando.life/article/2212573)
燃焼カテゴリーは依然として最大の採用ボリュームを持ち、特にRTO(再生熱酸化)が主流です。大風量・低〜中濃度の排ガスを高効率で処理でき、塗装ブースや化学プラントの共通解になっています。直焚き(DFTO)は構造が簡潔で立上がりに強く、断続運転や小規模設備で優位。触媒酸化は350〜450℃で分解でき、熱負荷とNOxの抑制に寄与しますが、シロキサン・硫黄・リンなどによる被毒には注意が必要です。
コスト面では、エネルギー価格の変動が投資判断に影響するため、熱回収・二次熱利用(乾燥・蒸気補助など)の組込みが採否を左右します。大規模案件では濃縮併用で運転費を最小化する設計が増加。
吸着は、再生して溶剤回収ができる点が強みで、化学・印刷・電子洗浄などで安定需要。活性炭は汎用・低コストで、入替やオンサイト再生の選択肢が広い。ゼオライトは耐熱・耐酸化性と低圧損で再生効率に優れ、ローター濃縮の中核材料として普及が進みます。エネルギー高騰を受け、回生温度の最適化・リーンガス活用など運転費削減の工夫が導入の鍵になっています。
低濃度・大風量に対しては生物処理(バイオフィルター / スクラバー)が低ランニングの選択肢。光触媒は常温・低負荷で小規模・室内寄りの用途で実績が増え、産業用では前処理・補助用途が中心。凝縮回収は高濃度・高回収価値の溶剤に有効。プラズマ・オゾン酸化は特定化合物や悪臭へのスポット適用が進み、後段の吸着や酸化と組み合わせるハイブリッド構成が増えています。
パンデミック期には設備投資が鈍化しましたが、規制順守と省エネの両要請から、更新案件と省エネ改造が再加速しています。
APACは製造集積と設備新設が多く、中長期の成長余地が最も大きい地域です。中国・インドの化学・塗装、東南アジアのパッケージング印刷の新増設に加え、日韓台の半導体・電池投資が牽引要因。省エネ型RTO、濃縮+小型酸化、回収と除害の組合せ案件が増えています。
日本は成熟市場で、既設の更新・増強と、エネルギーコスト対策が大きなテーマです。具体的には、①RTOの熱回収・断熱強化、②ゼオライト濃縮で燃焼炉を縮小、③吸着回生の回収率を高め廃棄コストを削減、④IoT監視で運転のムダを排除、といった投資が選ばれています。課題は、人手不足による保全体制の確保と、化学物質管理(PRTR・SDS)・悪臭対応・CO₂排出原単位低減の同時達成。ここに補助金・税制の活用余地が残ります。
VOC処理市場は、規制強化・省エネ・製造回復を背景に底堅く拡大しています。短期にはRTOの高効率化と濃縮併用、吸着・回収の高度化、IoT監視の普及が主流。中期には、回収価値の最大化(溶剤循環)と脱炭素の同時達成が差別化軸になります。
装置選定では、①排ガス量・濃度・化合物の特性、②連続/断続、③回収か除害か、④運転費と保全体制、⑤将来の拡張余地を基準に、濃縮×小型酸化、吸着回収×燃焼、凝縮×吸着などの組合せも視野に入れましょう。地域別にはAPACの成長余地が大きく、日本国内は更新・省エネ投資が着実に進む見込みです。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)
99%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)