メチルシクロヘキサン(MCH)は、シクロヘキサン環にメチル基が一つ付いた飽和炭化水素で、常温常圧では無色透明の液体です。沸点は約100℃と比較的低く、蒸気圧が高いため揮発性と可燃性がきわめて大きいことが特徴になります。消防法上は第4類危険物・第一石油類(非水溶性液体)に分類され、引火点が−6℃と低いため取り扱い時には防火・防爆対策が欠かせません。また、水への溶解度はきわめて小さく、比重は0.77前後と水より軽いため、流出すると水面に油膜を形成しやすい性質を持ちます。
MCHの化学式はC₇H₁₄、分子量は98.19です。低極性で安定な分子構造のため酸化や加水分解を受けにくく、腐食性もありません。揮発性が高い一方で臭気は弱く、蒸気は空気より重く滞留しやすいため局所排気や換気が重要です。急性経口毒性は中程度ですが、高濃度の蒸気を吸入すると中枢神経が抑制され頭痛やめまいなど麻酔様症状が現れます。
反復曝露では腎臓に影響を与える例が報告されており、作業環境では許容濃度(TWA)400ppmを超えないよう管理する必要があります。水生生物に対する毒性が強く、OECD試験ではメダカ96hLC₅₀が約2mg/L、ミジンコ48hEC₅₀が0.33mg/Lと報告されています。
低極性で安定しているため、塗料・インキ・接着剤・ゴム溶剤・洗浄剤などの希釈・溶解用に広く用いられます。トルエンなど芳香族溶剤より毒性が低いため「ノンアロマ溶剤」として代替採用されるケースもあります。
トルエンに水素を添加するとMCHになり、液体のまま大量の水素を常温常圧で輸送・貯蔵できる技術が実証されています。触媒による脱水素反応で再び水素を取り出しトルエンに戻す循環が可能で、日本でも実証プラントが稼働しています。
ナフサ改質工程での中間体や、高オクタン価成分トルエンの原料として利用されます。一部の試験燃料・軍用特殊燃料の添加剤として配合される例もあります。
高純度品は分光分析用溶媒や有機合成試薬として使用されます。
MCHは揮発性有機化合物(VOC)として光化学スモッグの原因物質となり得るため、大気汚染防止法や各国のVOC規制の対象です。水環境では低濃度でも水生生物に強い毒性を示し、容易に生分解されないうえ生物蓄積性も中程度に認められます。そのため国連輸送規則では海洋汚染物質(MarinePollutant)に指定され、EUCLP規則では「AquaticChronic」で表示義務が課されています。
日本国内ではPRTR第一種指定化学物質にはまだ指定されていませんが、安衛法の化学物質管理対象物質としてリスクアセスメントが義務付けられています。消防法に基づく貯蔵量規制、労働安全衛生法による許容濃度管理、そしてVOC排出抑制指針が実質的な規制の柱となっています。
まず優先すべきは排出抑制です。製造・使用設備を密閉化し、貯蔵タンクには浮き屋根やベーパーリカバリー装置を設置して蒸散を削減します。排気は活性炭吸着や触媒燃焼で処理し、漏洩源はLDAR(漏洩検知修繕)プログラムで継続監視します。事故時の大量流出に備えてオイルフェンスやフォーム消火剤を常備し、水域への流入を防ぐことが重要です。廃液は可能な限り蒸留再生してリサイクルし、再利用困難な残渣は専用焼却炉で無害化処理します。
溶剤用途では水系塗料・低毒性溶剤への転換を、エネルギーキャリア用途では脱水素反応の省エネ化触媒やアンモニア・液化水素など他との使い分けを進めることが環境負荷低減につながります。さらに事業者が環境マネジメントシステムを導入し、排出量やリスクを定量的に評価しながら自主的に改善サイクルを回すことが望まれます。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)
99%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)