溶剤回収に関する国内規制

溶剤は工業や製造業で広く使用される化学物質であり、適切な回収と管理は環境保全や労働者の安全確保に欠かせません。国内では廃棄物処理法、大気汚染防止法、労働安全衛生法が関連し、これらの法律を遵守することで環境負荷軽減や安全な労働環境の実現が可能です。

本記事では、それぞれの法律と溶剤回収の関連性を詳しく解説します。

溶剤回収に関連する国内規制とは?

溶剤回収に関連する主要な国内規制として、以下の法律が挙げられます。それぞれの目的や規制内容を理解することが大切です。

廃棄物処理法

廃棄物処理法は、廃棄物の適正な処理とリサイクルを促進するための法律です。具体的には、廃棄物の分類、収集・運搬、処分方法などが規定されています。

使用済みの溶剤は産業廃棄物として分類されることが多いため、適切に管理・処理しなければなりません。該当する企業は、廃棄物の適正処理を確保するため、廃棄物処理法を遵守する必要があります。

大気汚染防止法

大気汚染防止法は、大気の汚染を防止し、環境の保全を図ることを目的とした法律です。溶剤に含まれる揮発性有機化合物(VOC)は、大気汚染の原因となるため、その排出基準や監視体制が制定されました。

VOCは、大気中で光化学反応を起こし、光化学オキシダントやPM2.5の原因となります。大気汚染防止法では、VOCの排出基準が設定されており、事業者はこれを遵守しなくてはなりません。

この法律により、事業者はVOCの排出抑制措置を実行し、定期的な排出量の測定や報告が必要です。違反した場合には都道府県知事等によって揮発性有機化合物の処理の方法の改善や、使用の一時停止を命じられる場合があります。

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保するための法律です。労働者の健康被害を防ぐため、溶剤の安全な取り扱いと管理が必が求められます。

溶剤回収装置の運用においては、有機溶剤中毒予防規則などが適用され、作業環境の管理や労働者への教育・訓練が必要です。具体的には、作業環境測定、適切な換気設備の設置、個人保護具の使用、労働者への安全データシート(SDS)の交付などが義務付けられています。

労働安全衛生法に基づく安全対策では、有機溶剤を取り扱う際の適切な防護具(耐溶剤性の手袋や保護眼鏡など)の着用推奨や、ご使用や事故を防止する化学物質のラベル表示、緊急時対応計画の策定などを制定。労働者の健康と安全を守るために企業が守るべきポイントを提示しています。

企業が溶剤回収を進める上でのポイント

各法規制を踏まえた対応の重要性

溶剤回収を進める際には、廃棄物処理法、大気汚染防止法、労働安全衛生法の各規制を十分に理解し、それぞれの要件を満たす対応が求められます。廃棄物処理法に基づく適切な廃棄物分類と処理、大気汚染防止法に基づくVOC排出基準の遵守、労働安全衛生法に基づく労働者の安全確保など、各法令の要件を総合的に考慮することが重要です。

法遵守がもたらすメリット

法令を遵守することで、以下のメリットが得られます。

  • 社会的信頼性の向上: 企業の社会的責任を果たすことにつながり、取引先や顧客からの信頼を得られます。
  • 環境への配慮:適切な溶剤回収は、環境負荷の低減につながり、持続可能な社会の実現を支えます。
  • 労働者の安全確保:労働者の健康と安全を守ることで、労働意欲の向上や労働災害の防止につながります。

上記のメリットを享受するためには、各法規制を正しく理解し、適切な対応を継続的に行うことが不可欠です。

溶剤回収と国内規制の重要性

国内規制を遵守することは、環境負荷の削減や労働者の安全確保に直結するほか、適切な対応を進めることで、企業としての持続可能性や社会的評価が向上します。

各規制の遵守を通じて、環境保全や労働者保護、企業価値向上の実現が可能であることを認識し、適切な対応を進めていきましょう。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18