フラッシュ蒸発式回収装置とは

フラッシュ蒸発とは、高温状態にある液体を減圧で瞬間蒸発させる技術のことを指します。フラッシュ蒸発式回収装置は、化学・海水淡水化・溶剤回収などといった分野で使われているのが特徴です。フラッシュ蒸気とは、再蒸発蒸気とも呼ばれています。

高圧高温のドレンが低圧の雰囲気に晒されたときにドレンの一部が蒸気になる現象をフラッシュまたは再蒸発と呼び、このようにして発生した蒸気がフラッシュ蒸気や再蒸発蒸気と呼ばれているのが特徴です。

蒸気システムや蒸気輸送配管などの周辺で、身近なフラッシュ蒸気と言えば、スチームトラップから排出されたドレンなどから発生するフラッシュ蒸気が挙げられます。

フラッシュ蒸発式回収装置の種類

フラッシュ蒸発式回収装置の種類には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、フラッシュ蒸発式回収装置の種類や特徴についてご紹介します。

1. 単段フラッシュ蒸発方式

単段フラッシュの構造と仕組みは、圧力差で一気に蒸発させていきます。単段フラッシュ蒸発方式の特徴は、装置が簡素であり、短時間での回収が可能なほか、コスト低めな点が挙げられます。

単段フラッシュ蒸発方式の適用例は、有機溶剤の粗精製や単一成分分離などです。この方式は、等エンタルピープロセスと言われており、しばしば断熱フラッシュとも呼ばれています。

2. 多段フラッシュ蒸発方式

多段フラッシュ蒸発方式を導入するメリットは、段階的に圧力低下ができ、エネルギー効率アップを目指せます。多段フラッシュ蒸発方式の特徴は、処理効率が高く、連続的な蒸発・回収が可能な点が挙げられます。適用例は、海水の淡水化プロセスや高純度精製処理などとなっているのが特徴です。

多段フラッシュ蒸発方式は、単一の平衡段階を用いた単純な蒸留プロセスとして視覚化できるとされています。これは、単段フラッシュ蒸発方式とは大きく異なり、複雑になるのが特徴です。

装置選定時のポイント

フラッシュ蒸発式回収装置を選定時には、どのようなポイントを見ておけばよいのか気になるものです。装置選定時には、コストはもちろん、メンテナンスや各メーカーのサポート体制も考慮しておくことが重要です。

液体の性質や処理温度帯、省エネ性能についても確認しておきましょう。ここでは、フラッシュ蒸発式回収装置を選定時に確認しておきたいポイントについてご紹介します。

長期的な視点からコストを考える

フラッシュ蒸発式回収装置の選定において、特に重要な要素としてコストが挙げられます。初期費用はもちろん、運用のためのコストや廃棄物処理費用の削減効果についても考慮しておかなければなりません。液体の性質や処理温度帯、省エネ性能についても確認しておくことが重要です。

フラッシュ蒸気や蒸発濃縮装置といった装置の導入費用は、装置の種類や規模、処理する物質、処理量などによって決まります。長期的な運用コスト削減・廃棄物処理費用の削減効果についても考慮し、長期的な視点で検討することが重要です。装置を導入する前に、必要な回収精度や処理速度などを考慮したうえで、投資対効果を明確にしてから、自社の予算に合う装置を選定するようにしましょう。

メンテナンスやサポート体制も考慮

フラッシュ蒸発式回収装置は、小さな不具合だからとそのままにしてしまうと、故障につながる可能性もあります。それだけではなく、ヤケドなどのトラブルを起こす危険性もあるため、注意が必要です。気になる箇所や小さな不具合が生じた際には、速やかにメーカーへ伝え、修理やメンテナンスを行うことが重要です。

そのような点からも、装置導入の際には、信頼性の高いメーカーを選ぶようにしましょう。サポート体制がしっかりと構築されているメーカーにすると、不具合など気になる点も相談しやすいです。サポート体制は各メーカーによって異なるケースもあるため、導入前に確認するようにしましょう。

まとめ

フラッシュ蒸発とは、高温液体を減圧で瞬間蒸発させる技術のことを指し、これらは化学・海水淡水化・溶剤回収といった幅広い分野で活用されています。

単段フラッシュ蒸発方式と多段フラッシュ蒸発方式の特徴は、以下をご覧ください。

  • 単段フラッシュ蒸発方式のメリットは、装置が簡素でとあり、短時間で回収が可能・コストが低め
  • 多段フラッシュ蒸発方式は、処理効率が高く、連続的な蒸発・回収が可能

目的に合った方式選定が導入成功のカギです。導入時には、装置選定時のポイントを確認し、自社のニーズに合った装置の導入をしましょう。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18