半導体業界においての溶剤回収事例

半導体製造において使用される主な溶剤・用途

半導体製造プロセスでは、微細化や高集積化の進展に伴い、使用される溶剤の種類や量も多様化しています。溶剤はフォトリソグラフィー、エッチング、洗浄、乾燥といった工程に欠かせないものであり、高純度かつ安定供給が求められます。代表的な溶剤と用途を以下にまとめます。

イソプロピルアルコール(IPA)

IPAはシリコンウエハー洗浄や乾燥工程で最も頻繁に使用される溶剤です。速乾性と低残渣性に優れ、ウエハー表面に水滴跡を残さないため、歩留まり向上に寄与します。フォトリソ後のレジスト除去にも利用され、品質確保に欠かせません。

N-メチル-2-ピロリドン(NMP)

NMPは強力な溶解力を持ち、フォトレジスト剥離剤として利用されます。微細化が進むほど不要レジストの完全除去が重要となり、NMPの使用量は増加傾向にあります。ただし毒性があるため、適切な管理と回収が必要です。

アセトン

アセトンは部品や治具の洗浄に用いられ、油脂や有機物を効率的に除去します。揮発性が高いため換気設備や防爆対策が求められますが、再生利用すれば大幅なコスト削減が可能です。

トルエン・キシレン

これらの芳香族溶剤は、フォトレジストや絶縁膜用樹脂の溶解に使われます。高い溶解力を持つ一方で毒性や臭気が強く、排出時はVOC規制対象となるため、効率的な回収と安全管理が不可欠です。

その他の溶剤

半導体業界では、エチレングリコール系溶剤やフッ素系溶剤も特殊用途で使用されています。これらは揮発性や毒性が異なるため、溶剤ごとに適した回収技術を導入することが重要です。

半導体製造における溶剤回収のポイント

高純度維持と品質確保

半導体製造ではナノレベルの欠陥が製品不良に直結するため、回収した溶剤も高純度であることが求められます。蒸留や膜分離を活用して微量不純物を除去し、再利用しても製品品質に影響を与えない状態を維持することが重要です。

環境規制と法令遵守

NMPやトルエン、キシレンなどはVOC規制や労働安全規則の対象物質です。環境負荷低減のために、排出基準を満たす回収技術の導入が義務付けられており、各国の法規制に準拠したシステム構築が必須です。

経済性と資源循環

高額な溶剤を効率的に回収・再利用することで、年間の購入費用を数千万円単位で削減できるケースもあります。さらに廃棄処理費用の削減や、資源循環による企業イメージ向上といった副次的効果も期待されます。

安全性と作業環境改善

溶剤は可燃性や毒性を持つものが多く、作業環境の改善は従業員の安全確保につながります。回収装置を導入することで、作業環境中の溶剤濃度を低減し、労働安全衛生法の基準を満たすことが可能です。

装置選定の重要性

半導体製造に用いられる溶剤は多種多様であるため、蒸留、膜分離、圧力スイング吸着(PSA)など複数の技術を組み合わせた装置が求められます。生産規模や対象溶剤の特性に応じて最適な装置を選定することが、長期的なコスト削減につながります。

半導体製造における溶剤回収のケース

NMP回収の導入事例

国内大手半導体メーカーでは、フォトレジスト剥離工程で使用されるNMPを回収するため、専用蒸留装置を導入しました。不純物を除去して再利用可能な状態に戻すことで、年間使用量を30%以上削減。廃棄処理コストも減少し、環境負荷低減とコスト削減の両立を実現しました。

IPA回収・再利用の事例

シリコンウエハー洗浄に使用されるIPAは消費量が多いため、真空蒸留回収システムが導入されています。回収後のIPAは高純度を維持して再利用され、新規購入量の削減と廃棄量低減に直結しました。ある工場では、導入から2年で投資回収を達成した例もあります。

海外工場での多溶剤回収システム

海外の半導体工場では、IPA・NMP・アセトンなど複数の溶剤を対象とした統合回収システムを導入。圧力スイング吸着と蒸留を組み合わせることで、複数種類の溶剤を同時に処理し、再利用可能な状態に精製することに成功しています。これにより工場全体でのVOC排出量を大幅に削減しました。

まとめ

半導体製造では、IPAやNMPをはじめとする多様な溶剤が不可欠ですが、そのまま廃棄すると高コストかつ環境負荷の大きな要因となります。

溶剤回収装置を導入することで、高純度を維持した再利用が可能となり、規制対応・コスト削減・安全性確保を同時に実現できます。

事例からも明らかなように、溶剤回収は半導体産業の持続可能な生産体制を支える重要な施策です。装置選定の際には、対象溶剤や生産規模に応じた最適な方式を選ぶことが成功の鍵となるでしょう。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

反応・合成・洗浄工程で発生する
溶剤の排水回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)

回収率(目安)
                               

99%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18