電気自動車やデジタル機器の急速な普及に伴い、電池・電子部品業界の生産規模は拡大を続けています。この製造プロセスでは、洗浄や材料の溶解といった多様な目的で有機溶剤が使用されます。特にリチウムイオン電池製造で使用されるNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などは、環境負荷への懸念に加え、高価な溶剤であるため、適切な回収装置を用いて再資源化することが、コスト競争力の強化と環境規制対応の両面で不可欠です。
本記事では、電池・電子部品業界における溶剤回収のポイントと、事例について解説します。
半導体や回路基板の製造工程では、フラックスの除去や脱脂洗浄、あるいはフォトレジスト(感光材)の希釈などに、IPA(イソプロピルアルコール)やPGMEAなどの溶剤が広く使用されます。これらは揮発性が高く精密洗浄に適していますが、VOC(揮発性有機化合物)として大気汚染の原因となるため、確実な排出抑制と回収が求められます。
電池・電子部品業界の中で、特に大規模な溶剤回収が必要となるのが、リチウムイオン電池の正極製造で使用されるNMPです。NMPは正極活物質とバインダー(PVDF)を混合するスラリーの溶媒として使用されます。沸点が約202℃と高く、乾燥に多大なエネルギーを要するうえ、使用量が膨大であるため、回収による経済的メリットが非常に大きい点が特徴です。
特にNMPにおいては、単に回収するだけでなく、水分や不純物を取り除き、再利用可能なレベルまで精製して製造ラインに戻すことが重要です。電子材料や電池材料は微細なコンタミネーション(異物混入)が品質に直結するため、回収システムには高度な蒸留・精製機能が求められます。
溶剤の乾燥・回収工程では熱エネルギーを大量に消費します。そのため、乾燥炉からの高温排気ガスに含まれる熱を回収し、再び乾燥炉の熱源として利用するシステムが有効です。工場全体のエネルギー消費量を削減し、ランニングコストを抑えることが可能です。
多くの大規模電池工場では、乾燥炉から排出されるNMPガスを回収塔へ送り、冷却・凝縮させて液化回収を行っています。回収した粗NMPを精製装置で高純度化することで、外部からの新規購入量を低減しています。これにより、溶剤コストの大幅削減と、環境負荷低減の両立します。
電池・電子部品業界では、IPAのような汎用洗浄剤から、リチウムイオン電池製造に不可欠なNMPまで、多種多様な溶剤が使用されています。特に市場拡大が続くリチウムイオン電池分野では、NMPの回収・精製・再利用が製造コスト削減の鍵を握っています。使用する溶剤の特性や濃度、排熱利用の可否を考慮し、最適な回収システムを選定することが、持続可能なモノづくりには欠かせません。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)
99%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)