トルエン・キシレンは、どちらも塗装・印刷・接着・化学製品製造など、さまざまな業界で欠かせない存在です。しかし、取り扱いに注意が必要な化合物でもあるため、適切な管理と回収の重要性が増しています。
トルエンとキシレンは、いずれも芳香族炭化水素(アリール炭化水素)の一種で、ベンゼン環を持つ化合物です。主に有機溶剤や化学原料として使用されます。
トルエンは、無色透明の液体で特有の甘い芳香を持ち、速乾性の溶剤として使用されることが多いです。キシレンはトルエンに似た特性を持ちながら、トルエンよりも蒸発速度が遅く、粘度を調整しやすいという特徴があります。
どちらも水に不溶ですが、有機溶媒にはよく溶けること、揮発性・引火性が高いことが共通点です。また、蒸気を吸入すると中枢神経に影響を及ぼす健康被害を引き起こすため、取り扱いには注意が必要です。
トルエン・キシレンは、優れた溶解力や蒸発特性、化学的安定性、燃焼特性を持つため、塗装・印刷・化学・電子・燃料など幅広い業界で使用されています。
トルエンとキシレンは塗料の溶剤として使用され、塗膜の均一化や乾燥速度の調整に役立ちます。特に自動車塗装や金属塗装では、速乾性が求められる場合はトルエン、仕上がりの均一性が重要な場合はキシレンが適しています。
化学工業では、トルエンはゴムや樹脂の溶剤、医薬品や爆薬(TNT)の原料として利用されるケースが多いです。キシレン(特にp-キシレン)はポリエステル(PET)や合成繊維の原料として不可欠となっています。
主にグラビア印刷やフレキソ印刷のインク溶剤として活用されます。トルエンは速乾性を活かして高速印刷に、キシレンは粘度調整に優れた特性を持つため、用途に応じた使い分けが可能です。
そのほか、電子業界では部品や基板の洗浄剤、燃料業界ではオクタン価向上剤としてガソリンに添加されるなど、各業界で不可欠な存在となっています。
トルエン・キシレンは、揮発性有機化合物(VOC)の一種です。光化学反応を起こすことで光化学スモッグやオゾン生成の原因となり、呼吸器系への刺激や健康被害を引き起こす可能性も。長期的に排出が続くことで、地球温暖化や生態系への影響も懸念されています。
こうした問題を受け、日本では大気汚染防止法に基づくVOC規制が強化されました。一定規模以上の排出事業者には排出量の抑制が求められているほか、廃棄物処理法により、使用済み溶剤の適切な処理や管理が義務付けられており、不適切な廃棄は法的なリスクを伴います。
トルエン・キシレンを削減する方法には、溶剤回収装置の設置や代替溶剤の使用、プロセス改善、密閉型設備の導入などがあります。その中でも、溶剤回収装置は高効率で回収・再利用でき、環境規制に対応しやすいという点から、多数の企業に導入されている手法です。
規制対応を強化しながら、持続可能な生産体制を構築したいと考えている企業は、溶剤回収装置の導入を検討してみてください。
溶剤回収装置は、使用する化学製品や用途に合わせて選ぶことで、効果的な回収・再生が可能です。当サイトでは、反応・抽出、脱脂洗浄、乾燥など、さまざまな製造工程に適した溶剤回収装置を、用途別にご紹介していますので、導入をご検討の方はぜひご参考にしてください。
代替溶剤の使用や密閉型設備の導入などの方法は、溶剤の使用量を減らすことができます。しかし、ルエン・キシレンを再利用できるのは溶剤回収装置のみ。溶剤回収装置は、すでに使用した溶剤を再生し、繰り返し利用できるのが大きな特徴です。これにより、コスト削減と資源の有効活用を両立できます。
溶剤回収装置を導入すれば、一度の設備投資で長期的にコスト削減が可能です。他の方法では、代替溶剤の購入費用や密閉型設備のメンテナンスコストが継続的に発生するため、溶剤回収装置の方が長期的に経済的なメリットが大きくなります。
トルエンやキシレンの回収装置には、主に蒸留方式と吸着方式があります。
沸点差を利用して溶剤を分離するため、トルエンやキシレンなどの高沸点の有機溶剤に効果的な仕組みです。加熱によって気化させた後、冷却して再び液体として回収します。この方法は精度が高く、純度の高い溶剤の回収が可能。回収された溶剤は液体状態に戻り、再利用することができます。
特に、高純度な溶剤の回収が求められる化学製品や薬剤の製造過程、複数成分の分離が必要な製造業の溶剤回収などに利用されるケースが多いです。
吸着方式は、溶剤が活性炭などの吸着剤に吸着される性質を使用して、溶剤を効率的に回収する方法です。比較的短時間で高い回収効率を実現できるため、電子部品の洗浄工程や自動車の塗装で発生する溶剤回収の回収など、スピーディーな処理が求められる現場に適しています。
トルエンとキシレンは、沸点が比較的高く、揮発性が高い特徴を持っているため、効率的に回収するには蒸留方式の溶剤回収装置が適切です。その中でも、減圧蒸留を採用することで低温での回収が可能となり、エネルギー消費の削減や安全性の向上が期待できます。
トルエンやキシレンの引火性に対応するために、防爆モーターや爆発圧力用機を備えた防爆性能の装置や揮発性の物質が外部に漏れ出さない密閉構造を備えた装置を採用することがポイントです。これにより、漏れや火災のリスクを最小限に抑えることができます。
他の溶剤と比較して、トルエンやキシレンは沸点が高く、揮発性が高い特徴を持っています。そのため、エタノールやIPAなどの低沸点の溶剤に比べて、蒸発しやすく、取り扱いが難しいのが難点です。そのため、回収装置には強力な冷却システムや、低温での処理が可能な減圧蒸留方式が求められます。
トルエン・キシレン回収装置の導入は、企業が環境規制に対応しながら、コスト削減を実現するための有効な手段です。溶剤を再利用することで資源の無駄を減らし、環境への負荷を軽減できるため、持続可能な生産体制の構築が可能になります。自社のVOC排出量の見直しや専門家に相談することで、安全で効率的な運用を目指していきましょう。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など
95%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)