VOC(揮発性有機化合物)は塗装、印刷、接着、化学製造など多くの産業工程で使用されています。揮発しやすい性質から大気中に拡散しやすく、光化学オキシダントやPM2.5の生成要因となることから、法規制の対象となっています。環境保全や職場環境改善、企業の社会的責任を果たすうえでもVOC処理は欠かせません。本記事では、VOC処理装置で採用される代表的な技術を「回収」と「分解」に分類し、それぞれの仕組みや特徴を詳しく解説いたします。
VOC処理は大きく「回収技術」と「分解技術」に分けられます。回収技術はVOCを取り出して再利用できる点がメリットですが、濃縮物の処理や再資源化の仕組みが必要です。対して分解技術は、VOCを化学反応によって二酸化炭素や水などに変換し、最終的に無害化できる点が特徴です。どちらも一長一短があり、対象物質や用途によって使い分けられています。
適切な処理技術を選択する際には、以下の要素を総合的に判断する必要があります。
これらの観点を踏まえ、自社の工程に最も適した処理装置を選ぶことが重要です。
吸着法は、活性炭やゼオライトなど多孔質な吸着材を利用してVOCを捕捉する技術です。対象となるVOCが低濃度から中濃度の場合でも安定して効果を発揮するのが利点です。装置構造は比較的シンプルで導入しやすく、交換や再生を繰り返すことで溶剤の回収が可能となります。
一方で、吸着材が飽和すると効率が低下するため、定期的な交換や加熱再生が必要です。再生過程でエネルギーを消費する点や、活性炭の廃棄時に適正処理を行う必要がある点が課題です。塗装工場や印刷工場などでは広く採用されており、最も普及しているVOC処理技術の一つです。
吸収法は、VOCを水や有機溶媒に溶かし込むことで除去する方法です。排ガスと液体を接触させ、ガス中のVOCを吸収液に移行させる仕組みで、比較的低濃度のVOCに適しています。シンプルな構造で導入コストも抑えられます。
しかし、使用済み吸収液の処理が必要となり、二次汚染や廃液処理コストが課題となります。そのため、吸収液のリサイクルや、活性汚泥処理などとの組み合わせが検討されています。
冷却凝縮法は、ガスを低温まで冷却することでVOCを液化・凝縮させて回収する技術です。高濃度のVOCを効率的に捕集できるため、溶剤の再利用価値が高い場合に有効です。特に医薬品や化学工業の分野で利用されています。
デメリットとして、冷却装置の運転に大きなエネルギーを要するため、低濃度のVOCには不向きです。また、凝縮効率は沸点やガス組成に依存するため、事前の検討が不可欠です。
燃焼法は、VOCを高温で燃焼させ、二酸化炭素と水に分解する最も確実な方法です。装置構造がシンプルで、安定した性能を発揮することから世界的に普及しています。特に高濃度VOCの処理に適しており、化学工場や塗装ブースで採用例が多いです。
ただし、燃料を追加投入するためランニングコストが高く、二酸化炭素の排出増加につながる点がデメリットです。熱回収システムを併用することで、燃料コストを抑える取り組みも行われています。
触媒燃焼法は、白金やパラジウムなどの触媒を用いてVOCを低温で酸化分解する方法です。省エネルギーで効率的に処理できるため、低濃度のVOCに適しています。排ガス温度を下げられることから、装置の長寿命化にも寄与します。
しかし、触媒は被毒(硫黄分やハロゲン化合物による劣化)を受けやすく、定期的な交換やメンテナンスが必要です。導入コストも高めですが、運転コストは燃焼法より低く抑えられるため、長期的には有利な場合もあります。
生物処理法は、バイオフィルターやバイオスクラバーといった設備を用い、微生物の代謝活動によってVOCを分解する方法です。低濃度・大風量のVOCガスを対象に適しており、運転コストが低いのが魅力です。
一方で、温度や湿度などの環境条件に処理性能が左右されやすく、濃度変動が大きい場合には安定した効果を発揮しにくい面があります。主に食品工場や下水処理施設など、低濃度ガスの発生源で導入されています。
光触媒法は、酸化チタンなどの光触媒を用いて、紫外線や可視光を当てることでVOCを酸化分解する技術です。常温常圧で運転可能で省エネ性が高いというメリットがあります。研究段階から実用化へ進んでいる技術で、建材や空気清浄機への応用も広がっています。
ただし、反応効率が光の照射強度や触媒の表面積に依存するため、産業用途としては改良の余地があります。今後の材料開発や反応器設計の進化によって実用性が高まると期待されています。
放電プラズマ法は、電気放電による高エネルギー状態のプラズマを利用してVOCを分解する方法です。短時間で分解可能で、低温で処理できる利点があります。小規模施設や研究用途で導入が進んでいます。
一方、副生成物が発生する可能性があり、処理後のガスを追加処理する必要が生じる場合があります。電力コストも課題ですが、再生可能エネルギーとの組み合わせによって改善が図られると考えられます。
回収技術は溶剤の再利用が可能で、資源循環に貢献できる一方、二次処理や廃棄物管理のコストが発生します。分解技術はVOCを完全に処理できるメリットがあるものの、エネルギー負荷や触媒管理といった課題があります。
たとえば、印刷業や塗装業では吸着法と燃焼法を組み合わせて使うケースが多く、半導体産業では冷却凝縮法が活用されています。環境配慮型の新工場では光触媒や生物処理法を導入する動きも見られます。
VOC処理装置は、業種・排出条件・コスト制約によって最適な技術が変わります。回収と分解の技術を上手に組み合わせることで、効率的かつ持続可能なVOC対策が可能となります。今後は、省エネやカーボンニュートラルの観点からも、新技術の開発や既存技術の高度化が進むことが予想されます。事業者は自社の排出状況を正しく把握し、最適な処理装置を導入することが重要です。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)
99%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)