ジクロロメタン

ジクロロメタンとは?

化学式 CH₂Cl₂ で表される有機塩素系の溶剤です。無色透明でやや甘い臭気を持ち、低沸点・高揮発性という性質から、洗浄・剥離・抽出など工場工程で幅広く用いられます。

ジクロロメタンの基本特性

分子量約84.9、沸点は約40℃、融点はおよそ−97℃です。比重は約1.3で水より重く、蒸気は空気より重いため、槽やピットなどの低所へ溜まりやすい特性があります。水には溶けにくい性質を持つ一方で、エタノールやエーテルといった多くの有機溶剤とはよく混ざり合います。

通常の使用条件下では引火点がなく燃えにくい物質ですが、高濃度の蒸気は可燃性となり、火気のある場所では爆発の危険性があるため注意が必要です。

ジクロロメタンの主な用途

産業用途では、高い溶解性と揮発性、不燃性という特性から、様々な産業分野で重要な溶剤として利用されてきました。代表的な用途としては、金属部品の脱脂洗浄やプリント基板の洗浄剤が挙げられます。油分や樹脂を溶かすため、製造工程における精密な洗浄に適しています。

古い塗膜を剥がすための塗料剥離剤の主成分としても、使用されてきました。その他、ポリカーボネート樹脂の製造過程やウレタンフォームの発泡助剤、医薬品や農薬を合成する際の反応溶媒や抽出溶媒など、化学工業の幅広い場面で活用されています。

一方で、作業者曝露や環境排出への配慮が必要なため、密閉式洗浄機や回収設備の組み合せ、 溶剤循環・蒸留再生による使用量削減、代替ケミカルへの段階的切替など、工程全体での リスク低減が重視されます。

環境への影響と規制

ジクロロメタンは高揮発性VOCとして大気へ放散しやすく、光化学オキシダント生成への寄与が 懸念されます。また、事業所などから土壌や水域へ排出された場合、水より重い性質から地下水へ浸透し、土壌・地下水汚染を引き起こす可能性もあるのです。

人体への影響も大きく、高濃度の蒸気を吸入するとめまいや吐き気などの中枢神経系への影響や麻酔作用を引き起こし、重篤な場合には死亡事故に至るケースも報告されています。

規制面では、日本国内では化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)や、労働安全衛生法の特定化学物質障害予防規則(特化則)によって、排出量の届出や作業環境の管理が厳しく義務付けられています。国際的にも規制は強化される傾向にあり、特に欧米では塗料剥離剤などの消費者向け製品への使用が禁止されるなど、より厳格な措置が取られています。

ジクロロメタンに対する環境対策

環境負荷と健康リスクを低減するため、事業所では多角的な対策が求められます。基本的な対策は、ジクロロメタンの使用量を削減し、より安全な代替物質へ転換することです。

洗浄用途では水系洗浄剤や炭化水素系溶剤、塗料剥離剤では非塩素系の製品への代替が進められています。ジクロロメタンの使用を継続する場合には、排出を抑制するための工学的対策が不可欠です。具体的には、洗浄槽に蓋を設置したり、製造プロセス全体を密閉化したりすることで、大気中への揮発を軽減します。

排気や排出ガスに含まれるジクロロメタンを回収し、再利用するための溶剤回収装置の導入が有効な対策です。回収方式には、排ガスを冷却して液体として回収する「冷却凝縮式」や、活性炭などに吸着させて分離回収する「吸着式」などがあり、排出ガスの濃度や量に応じて適切な方式が選択されます。

これらの設備を導入することにより、環境への排出量を削減すると同時に、溶剤の購入コストを低減することも可能になります。

ジクロロメタン溶剤回収装置の仕組みと選定ポイント

ジクロロメタンの適切な管理と再利用を実現するためには、効果的な溶剤回収装置の導入が欠かせません。ジクロロメタン溶剤回収装置の基本的な仕組みと選定時の重要なポイントを解説します。

ジクロロメタン溶剤回収装置の仕組み

ジクロロメタンは以下の回収方法によって、効率的かつ安全に回収し、再利用することができます。

蒸留方式

蒸留方式は、ジクロロメタンの沸点(約40℃)を利用して、洗浄工程などで混入した油分や樹脂などの不純物から分離し、純度の高い溶剤を再生する手法です。加熱によって気化させ、その後冷却・凝縮させることで、液状のジクロロメタンを回収します。主に液状の廃溶剤を処理するのに適しています。

蒸留式溶剤回収装置
について詳しく見る

吸着方式(活性炭吸着)

活性炭を用いて、排ガス中に含まれるジクロロメタン分子を物理的に捕集する方法です。吸着されたジクロロメタンは、蒸気(スチーム)や不活性ガスを用いて脱着させ、冷却・分離工程を経て回収されます。大気放出を抑えるための排ガス処理に非常に有効であり、低濃度のガスからでも高い効率で回収が可能です。

吸着式溶剤回収装置
について詳しく見る

ジクロロメタン溶剤回収装置の選定ポイント

ジクロロメタンはその物理的特性や法的規制から、装置選定において特有の留意点があります。

高い回収効率(排出濃度規制への対応)

ジクロロメタンはVOC(揮発性有機化合物)規制や特化則の対象であるため、極めて高い除去効率が求められます。排気中の濃度を規制値以下まで確実に下げられる性能があるか、また濃度変動に対しても安定した性能を発揮できるかが重要です。

耐食性の確保

ジクロロメタンは水分と反応すると加水分解を起こし、微量の塩酸を生成することがあります。これにより装置内部が腐食する恐れがあるため、ステンレス鋼(SUS316L等)や特殊な防食加工が施されているか、耐食性に優れた設計であるかを確認する必要があります。

ランニングコスト(蒸気・電力消費)

吸着方式の場合、活性炭を再生するために必要な蒸気(スチーム)量や、ファン・ポンプを動かす電力消費量が運用コストに直結します。エネルギー効率を最適化した設計の装置を選ぶことで、長期的な維持費を大幅に抑えることが可能です。

安全対策と自動監視

高濃度のジクロロメタン蒸気は爆発の危険性があるため、防爆構造はもちろんのこと、異常を検知した際の自動停止機能や、24時間の自動監視システムを備えた装置が推奨されます。作業員の安全を確保するためのリーク検知機能の有無もポイントです。

ジクロロメタン溶剤回収装置の導入メリット

ジクロロメタン溶剤回収装置の導入は、単なる環境対策にとどまらず、経営面や職場環境の改善においても大きな利点をもたらします。

溶剤購入コストの大幅な削減

使用済みのジクロロメタンを回収して工程に再投入することで、新規に購入する溶剤の量を大幅に減らすことができます。溶剤価格が高騰する中でも、安定したコスト管理が可能になり、廃棄物処理委託費の削減と合わせ、短期間での投資回収が期待できます。

規制遵守とCSR(企業の社会的責任)の向上

PRTR法や労働安全衛生法などの厳しい規制をクリアし、大気や地下水への排出を最小限に抑えることで、コンプライアンスを強化できます。環境配慮型の企業として社会的信頼が高まり、取引先や地域社会からの評価向上につながります。

作業員の健康リスク低減と職場環境の改善

高性能な回収装置を導入し、揮発ガスを徹底的に捕集することで、工場内の溶剤濃度を低減できます。中枢神経系への影響や急性中毒のリスクを抑え、作業員が安心して働ける健康的な職場環境を実現することは、労働災害の防止と生産性の維持に不可欠です。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

反応・合成・洗浄工程で発生する
溶剤の排水回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)

回収率(目安)
                               

99%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18