トリクロロエチレン

トリクロロエチレンとは?

分子量131.40の無色透明な液体です。やや甘い臭気を持ち、油脂や樹脂を溶かす能力が高いことから、 脱脂洗浄剤として広く利用されてきました。

トリクロロエチレンの基本特性

水には溶けにくい性質を持ちますが、アルコールやエーテルといった多くの有機溶剤とは容易に混和します。比重が約1.46と水より重く、沸点は86.9℃。揮発性が高いため、常温でも蒸発しやすい性質を持ちます。この蒸気は空気の約4.5倍の重さがあるため、低い場所に滞留しやすい傾向があります。化学的には比較的安定していますが、光や熱によって分解し、有毒な化合物を生成する可能性があります。

トリクロロエチレンの主な用途

代表的な用途は、金属部品や電子部品の脱脂洗浄です。油脂に対する高い溶解性と速い乾燥しやすい性質を活かし、精密機械や半導体の製造工程で不純物を除去するために使用されてきました。過去にはドライクリーニングの溶剤としても利用されていましたが、その毒性から現在ではほとんど使われていません。

近年では、その役割は洗浄用途から化学原料へとシフトしています。その他、染料や塗料の製造過程における溶媒など、限定的ながらも工業分野で利用されています。

トリクロロエチレン環境への影響と規制

高い揮発性から大気中に放出されやすく、環境に影響を与える物質です。大気中では分解されますが、その速度は遅く、数日から数ヶ月にわたって残留することがあります。また、土壌や地下水に浸透すると、自然な分解がさらに遅くなるため、長期間にわたり汚染が続く原因となります。

日本では1980年代から地下水汚染が社会問題となり、各地で対策が進められてきました。このような背景から、日本では化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)や大気汚染防止法、水質汚濁防止法など、複数の法律によってその排出量が厳しく規制されているのです。

事業者は、年間の取扱量に応じて排出量を国に届け出る義務や、定められた排出基準を遵守する義務を負っています。

トリクロロエチレンに対する環境対策

トリクロロエチレンを取り扱う工場では、環境への排出を抑制し、作業者の安全を確保するための対策が不可欠です。具体的な対策として、まず設備の密閉化が挙げられます。洗浄槽などを密閉構造にすることで、トリクロロエチレンの蒸発と大気中への漏洩を物理的に防ぎます。

さらに、作業時に発生する蒸気を外部に逃がさないよう、局所排気装置を設置し、蒸気を捕集します。捕集した蒸気は、溶剤回収装置を通して活性炭に蒸気を吸着させたり、冷却して液体に戻したりすることで、トリクロロエチレンを回収・再利用が可能です。これにより、環境負荷の低減と溶剤購入コストの削減両方の効果が期待されます。

トリクロロエチレン溶剤回収装置の仕組みと選定ポイント

トリクロロエチレンの適切な管理と再利用を実現するためには、効果的な溶剤回収装置の導入が欠かせません。トリクロロエチレン溶剤回収装置の基本的な仕組みと選定時の重要なポイントを解説します。

トリクロロエチレン溶剤回収装置の基本的な仕組み

トリクロロエチレンは以下の回収方法によって、効率的かつ安全に回収し、再利用することができます。

活性炭吸着・蒸気脱着方式

排ガス中のトリクロロエチレンを活性炭に吸着させ、その後スチーム(蒸気)で脱着・回収する方式です。トリクロロエチレンは活性炭への吸着性が非常に高いため、低濃度の排ガスからでも極めて高い効率で回収でき、大気放出を最小限に抑えることが可能です。

吸着式溶剤回収装置
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膜分離

特殊な分離膜を用いて、ガス中の溶剤成分を選択的に透過させることで濃縮・回収する方式です。加熱や冷却のエネルギーを抑えつつ、連続的に処理を行えるのが特徴です。比較的高濃度のガス処理や、装置のコンパクト化が求められる現場に適しています。

膜分離式溶剤回収装置
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冷縮回収方式

排ガスを強力に冷却し、溶剤を液体として凝縮させて回収する方式です。シンプルな構造であり、化学的に安定したトリクロロエチレンの性質を活かして直接的に液体に戻すことができます。爆発限界濃度以下での管理や、小規模なプロセスでの導入に向いています。

冷縮式溶剤回収装置
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トリクロロエチレン回収装置の選定ポイント

トリクロロエチレンは環境規制が非常に厳しく、物理的特性に基づいた適切な装置選定が求められます。

漏洩ゼロの追求(気密性)

トリクロロエチレンは非常に高い環境汚染リスクを持つため、装置全体に高度な気密性が求められます。わずかな漏洩も許されない現場では、接合部のシール性や密閉構造が徹底されているかどうかが、選定の最優先事項となります。

耐食性(腐食対策)

トリクロロエチレン自体は安定していますが、水分や熱が加わることで微量の酸を生成する場合があります。装置の長寿命化を図るためには、耐食性に優れたステンレス材(SUS316等)の採用や、腐食に強い内部設計が不可欠です。

回収液の純度と再利用性

回収したトリクロロエチレンを再び洗浄工程などで使用する場合、水分や不純物の混入をどこまで抑えられるかが鍵となります。高純度な溶剤として再生できる分離性能を備えているか、後工程での精製負荷が少ない設計かを確認しましょう。

モニタリング機能の充実

排出基準の遵守を証明するため、排気濃度をリアルタイムで監視・記録できるシステムが重要です。異常検知時に即座に自動停止やバイパス運転へ切り替わるなど、安全・環境対策が自動化されている装置が推奨されます。

トリクロロエチレン溶剤回収装置の導入メリット

トリクロロエチレン回収装置の導入は、コスト面だけでなく、法的・社会的なリスクを回避する上で極めて大きな意味を持ちます。

廃溶剤処理コストの劇的削減

溶剤を回収・再利用することで、高価なトリクロロエチレンの新規購入量を大幅に削減できます。また、産廃として処理する費用も抑えられるため、運用コストの劇的な改善に直結します。多量に使用する工場ほど、投資回収までの期間が短縮されます。

法的コンプライアンスの徹底

大気汚染防止法や水質汚濁防止法など、トリクロロエチレンに課せられた厳しい排出基準を確実にクリアできます。法令遵守体制を強化することで、行政指導や社会的信用の失墜リスクを根本から取り除くことが可能です。

土壌・地下水汚染リスクの低減

万が一の漏洩が土壌・地下水汚染に発展した場合、その浄化費用は数億円規模に上ることもあります。装置によって溶剤を徹底管理・回収することは、こうした甚大な経営リスクの事前回避につながり、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもなります。

【用途別】おすすめの溶剤回収装置3選

化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

洗浄・脱脂・乾燥工程で発生する
VOCガスの溶剤回収なら
蒸気脱着式溶剤回収装置
(栗本鐵工所)
蒸気脱着式溶剤回収装置(栗本鐵工所)
引用元:栗本鐵工所
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/youzai.html)
おすすめの理由

VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。

該当する主な物質

トルエン、キシレン、ベンゼン など

除去率(目安)

95%(※1)

抽出・精製・濃縮工程で発生する
塩素系廃液の溶剤回収なら
排水処理装置 ソルピコ
(日本リファイン)
排水処理装置 ソルピコ(日本リファイン)
引用元:日本リファイン
(https://n-refine.co.jp/service/environment/)
おすすめの理由

ファインケミカル製品精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、水蒸気排気に強いドライ式真空ポンプを使用。回収した廃液の引取り・精製にも対応。

該当する主な物質

1-2ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素 など

回収率(目安)

95%~(※2)

反応・成形・合成工程で発生する
DMF排水の溶剤回収なら
DMF回収装置
(日本化学機械製造)
DMF回収装置(日本化学機械製造)
引用元:日本化学機械製造
(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/56)
おすすめの理由

一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。

該当する主な物質

DMF など

回収率(目安)

99.5%~(※3)

(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18