有機溶剤脱脂洗浄は、ウェハ表面に付着したレジスト残渣や有機コンタミ、パッケージング工程由来の油膜などを、アセトンやNMP、炭化水素系溶剤などを用いて除去する洗浄工程です。パターニング精度や実装信頼性を高めるためには、微細パターンのエッジ部や段差部に残りやすい薄い有機膜まで確実に除去することが重要となります。スプレー、ディップ、超音波併用などさまざまな方式があり、前後段の薬液洗浄・リンス・乾燥との整合性も求められます。
特に微細化が進んだウェハでは、洗浄力だけでなく、溶剤由来の残渣やアウトガスを後工程へ持ち込まないことも品質確保のポイントです。そのため、装置本体の密閉性や排気処理、溶剤回収の仕組みまでを含めた設計が欠かせません。ウェハ洗浄・乾燥モジュール全体の位置付けや他工程との関係については、以下のページで詳しく解説しています。
有機溶剤脱脂洗浄では、用途やターゲット汚染物に応じて複数の溶剤が使い分けられます。代表例として、レジスト残渣や有機膜の溶解に用いられるアセトン、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの極性溶剤が挙げられます。また、パッケージングやモールド関連の油脂・ワックス除去には、トルエン・キシレンをはじめとする炭化水素系溶剤や、樹脂の溶解性に優れたエステル系溶剤が利用されます。
さらに、脱脂洗浄の仕上げとしてIPAワイピングやIPAリンスを組み合わせるケースも多く、「溶解力の高い溶剤でしっかり除去し、揮発性の高いIPAで仕上げる」構成が一般的です。溶剤選定では、洗浄力だけでなく、引火点・蒸気圧・毒性・材料への影響・金属不純物・含水率といった条件を総合的に確認し、装置の封じ込め性能や排気処理方法とのマッチングを図る必要があります。
有機溶剤脱脂洗浄では、洗浄槽や乾燥工程から発生する溶剤蒸気・ミストを確実に捕集し、再利用または安全な排出濃度まで処理することが求められます。溶剤回収には、活性炭などの吸着材を用いた吸着回収、コンデンサによる凝縮回収、条件によっては膜分離などの技術が採用されます。とりわけ半導体・電子部品向けのラインでは、比較的コンパクトな風量で高濃度・高変動の排気を安定処理できる方式が重視されます。
吸着回収では、まず活性炭層に溶剤成分をとらえ、一定量飽和したところで脱着工程に切り替えて濃縮された溶剤を取り出します。脱着方式には、従来から使われる蒸気脱着式に加えて、近年では水を使わず減圧によって溶剤を離脱させる真空脱着式も用いられています。凝縮回収は、冷却器で溶剤蒸気を液化するシンプルな仕組みで、入口濃度や温度条件によっては吸着回収との組み合わせで効率を高めることができます。
有機溶剤脱脂洗浄向けの溶剤回収装置を選定する際は、まず「処理風量・入口溶剤濃度・排気温度・水分混入の有無」を定量的に把握することが出発点になります。そのうえで、対象溶剤の物性(沸点・蒸気圧・水との相溶性・腐食性)と、回収した溶剤の再利用可否(グレードダウン利用を含む)を整理し、最適な方式を検討します。NMPや水溶性の高い極性溶剤を多用する場合は、水を扱う蒸気脱着式では排水処理の負荷が大きくなりがちで、真空脱着式など水を用いない構成の方が有利になるケースもあります。
また、モールド金型洗浄やワイヤボンドノズル洗浄など、局所的な排気が多いラインでは、風量変動・濃度変動に強い設計であることが重要です。設備側の制約としては、設置スペース・ユーティリティ(蒸気・冷却水・電力)・メンテナンス性・将来的な拡張性なども考慮すべきポイントです。単純な初期費用だけでなく、溶剤購入費・廃棄処理費・排水処理費などを含めたライフサイクルコストで比較検討するのが合理的です。
有機溶剤脱脂洗浄ラインに溶剤回収装置を導入するメリットとして、まず挙げられるのが溶剤使用量・廃棄量の削減です。高価なNMPや電子デバイスグレードの溶剤は、回収・再資源化することで購入量を抑えられ、溶剤コストと産業廃棄物処理コストの双方を低減できる可能性があります。また、排気中のVOC濃度を安定的に抑制できるため、大気汚染防止法などの規制値遵守や作業環境改善にもつながります。
さらに、回収設備を適切に組み込むことで、装置内やクリーンルーム内への溶剤成分の堆積を抑え、装置汚染・パーティクルリスクを軽減できます。これは結果的に、歩留まり向上や定期メンテナンスの工数削減といった効果を生みます。加えて、排水量やCO₂排出量の削減といった環境指標の改善は、サプライチェーン全体でESG・サステナビリティ評価が重視される現在、取引先からの評価向上にも寄与します。
栗本鐵工所が提供する真空脱着式溶剤回収装置は、真空脱着(PSA)方式を採用し、脱着工程で水蒸気を使用せず、常温域で活性炭を再生できるため排水量を大幅に低減できるのが特長です。粒状活性炭を用いた固定床構造により、多様な有機溶剤ガスに対して高い除去性能と安定運転を両立しています。小~中風量の局所排気に対応しやすく、有機溶剤脱脂洗浄やスポット洗浄など、負荷変動の大きいラインでも適用しやすい仕様です。
NMPはレジスト剥離や有機汚染物の除去に用いられることが多く、有機溶剤脱脂洗浄の代表的な溶剤のひとつです。一方で水との相溶性が高く、従来の蒸気脱着式では脱着に用いる蒸気や凝縮水にNMPが混ざり込み、排水処理負荷が増大しやすいという課題がありました。真空脱着(PSA)方式は脱着に水蒸気を使わないため、排水量そのものを抑えつつ、吸着材に蓄えたNMPを効率よく回収できる点が大きなメリットとなります。
また、粒状活性炭の固定床を真空ポンプで減圧しながら運転するサイクルにより、入口濃度や負荷の変動があっても安定した吸着・脱着を実現しやすい構成です。これにより、有機溶剤脱脂洗浄ラインの立ち上げ・立ち下げやバッチ運転時の濃度変動にも追従しやすく、NMPを含む混合溶剤ガスの処理にも対応できます。さらに、蒸気ユーティリティを必要としないため、熱源設備の簡素化とエネルギー消費・CO₂排出量の低減にもつながります。回収されたNMPは必要に応じて精製工程に送ることで、再利用やグレードダウン利用が可能となり、溶剤購入費・廃棄処理費の削減に寄与します。
炭化水素系(トルエン、キシレン、ベンゼン)、エステル系(酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルコール系(IPA、メチルアルコール、エチルアルコール)など。フッ素系(フロン類の工業用洗剤)などにも対応が可能です。
栗本鐵工所は、活性炭吸着を用いた排気ガス処理や連続式粉体ハンドリング設備で長年の実績を持つメーカーです。粉体乾燥設備や主反応設備から発生する高濃度溶剤ガスの処理に携わってきた経験をもとに、小風量から大風量まで幅広い規模・用途に対応できる溶剤回収システムを提供しています。従来の蒸気脱着式に加え、真空脱着式をラインナップすることで、水系混在排気や排水量低減ニーズにも柔軟に対応できる点が特徴です。
有機溶剤脱脂洗浄やモールド金型洗浄など、変動負荷の大きいラインに対しても、入口ガス組成や運転条件に合わせた個別設計が可能であり、実装現場の要求に即した提案が期待できます。溶剤回収の導入を検討する際には、処理条件や既設設備の状況を共有することで、より最適な構成を協議できます。
有機溶剤脱脂洗浄は、ウェハや電子部品の表面から有機汚染物を確実に除去し、後工程の歩留まりと信頼性を支える重要な洗浄工程です。一方で、アセトンやNMP、炭化水素系などの有機溶剤を多量に扱うため、VOC排出規制・作業環境・溶剤コスト・排水処理といった複数の課題が同時に存在します。溶剤回収装置を適切に組み込むことで、これらの課題をバランスよく解消しつつ、資源循環型の運用に近づけることができます。
とくに真空脱着式溶剤回収装置は、水を用いずに活性炭を再生できるため、NMPをはじめとする極性溶剤や水分を含む排気に対して有効な選択肢となります。処理風量・濃度・温湿度・ユーティリティ条件を整理し、自社ラインに適した方式・仕様を選べば、溶剤使用量と廃棄量の削減、環境負荷低減、設備運転の安定化を同時に実現することが可能です。
化学薬品工場や印刷工場、金属加工工場、塗装工場などさまざまな現場で使用されている溶剤。溶剤回収装置を活用することで、コスト削減、環境配慮、法規制への対応などさまざまな効果を得ることができます。
溶剤回収装置は、装置によって仕組みや処理の方法、対応可能な溶剤などが異なるため、現場の用途に合わせて選ぶのがおすすめ。ここでは3つのタイプをご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
VOCガス処理で50年以上の実績があり、粒状活性炭を吸着材に使用した装置で、濃度変動がある環境下でも95%の除去率(※1)を実現。リサイクルにも対応。
トルエン、キシレン、ベンゼン など
95%(※1)
有機溶剤精製等の蒸留工程で実績とノウハウがあり、高回収率・省エネルギー型で低ランニングコストを実現。回収した廃液の引取り・精製にも対応。
水よりも沸点が低い、または、水と共沸点を持つ溶剤(アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類 など)
99%~(※2)
一本塔の減圧濃縮方式と比べて、蒸気原単位が40%以上節減できる「多重効用蒸留方式」を採用。品質も安定しており、無色で純度99.5%以上のDMFを回収可能。
DMF など
99.5%~(※3)
(※1)参照元:栗本鐵工所公式(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/about/test-machine.html)
(※2)参照元:日本リファイン公式(https://n-refine.co.jp/service/environment/solpico/)※処理対象・運転条件等で異なる。
(※3)参照元:日本化学機械製造(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/18)